不協和音は愛の始まり
こういう時、失礼かもしれないけれど川畑が見えない事が有難いと思ってしまう。
私はそっと目を瞑って涙を堪えてから、努めて明るい声で言った。

「大変!川畑さん、あと30分で授業です」
中学までは歩いて5分位だが、準備の為にいつも30分前には着くようにしている。

川畑は頷いて、
「あぁ…ごめん」
小さく謝った。
遅れてしまった事を謝ったのだろうけど、川畑の普段の言葉使いが命令調なだけに、言葉足らずでもその一言は大きくて、私はなんだかジーンと来てしまった。

外出用のサングラスをかけている川畑の表情は読み難い。
一緒に寝れなくなった事を川畑も残念に思っていたら嬉しいな…と思った。
< 12 / 57 >

この作品をシェア

pagetop