不協和音は愛の始まり
川畑さん…もうしっかり見てしまってばっちり驚いてしまったんですけど…。
いやそれより、もしかして今、ママって言いました?

そんな心の声を伝える事も出来ずに呆然としていると、
「前に話してたメイドの子?」
お母さんが私を振り返り、目が合って私はカァッと頬が紅くなるのを感じた。

「メイドじゃないよ」
川畑はクスッと笑う。

「川畑さん…」
黙っている訳にもいかないので、私は声を出して川畑に私の存在を教えた。

「恭子…居たのか」
川畑が私の方を向き、チッと舌打ちをした。
確かめる為にだろうけど、なんだか本気の舌打ちのように感じて、私は傷ついてうなだれた。
「あの、私帰りますから」

飛び出した庭先で川畑が何か言ったような声を聞いたが、振り返らずに逃げるように川畑邸を出てしまった。
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