不協和音は愛の始まり
お父さんには構わず、お母さんが私を真っ直ぐ見て言った。
「恭子、相手の親御さんと暮らすのは大変よ。お父さんとお母さんも昔、お父さんの両親と同居するつもりだったの」
「そうなの?」
初耳だ。

「恭子はまだ小さかったから憶えていないでしょうけど、お父さんのお母さん…恭子のお祖母さんが倒れてから一緒に暮らすつもりで私達が引っ越して来てね。最初は同居してたんだけど、お互い気を使っては空回りする事が多くて、お祖父さんにはストレスになってしまったようなの。一人の方が気楽でいいって別々に暮らすようになったのよ。お祖父さんは元気だったから余計に、長年培ってきた生活を変えるより一人でやる方がいいと思ったんじゃないかしら」

「そうなんだ…」
私はお祖父ちゃんの意外な一面にビックリした。
寝たきりのお祖母ちゃんを献身的に介護していた優しいイメージだったお祖父ちゃんは、人任せに出来ない頑固な所があったのかもしれない。
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