不協和音は愛の始まり
「あの頃はお母さんも若かったからね、今思うともっと上手く付き合えたら良かったと思うの。お互い譲れない事と、相手に合わせてあげられる事を見つけてね」
なるほど…難しそうだけど、大事だと思う。

「はぁ…」
お母さんがわざとらしく大きな溜め息をついた。
「結婚前なのに、なんだか嫁に行った娘と話してるみたいな気分よ」
笑って言ったお母さんと目が合って、私も笑った。

「まだ嫁にやったつもりはないぞ~」
明らかに飲み過ぎてるお父さんが、拳を上に振り上げてバランスを崩し、お母さんに寄り掛かる。
「もう、酔っ払いは黙ってなさい」
お父さんを押し返したお母さんの呆れ声には、優しさがこもっていた。
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