不協和音は愛の始まり
ベッドの川畑は目を開ける事はないけれど、私はなんとなくその雰囲気で目覚めているのを感じながら、そっと声をかけた。

「川畑さん、朝ご飯が出来ました」
「ん…」
川畑は軽く頷くと布団から手を出して、気だるげに髪をかきあげるような仕草で頭に手をやり、止まった。

癖のないショートの黒髪がサラサラと長い指から溢れ落ちる。
不機嫌そうに眉を寄せる顔は、一緒に暮らしてから知った、朝だけ見せる顔だ。
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