不協和音は愛の始まり
「川畑さん!私…重いのにっ」
焦って退こうとすると、ギュッと抱き締められた。

「重くないよ。心地良い」
川畑は笑って、
「ベッドでは名前で呼ぶはずだろう?」
と悪戯っぽく言って来る。

「…聖士さん」
こういう時の川畑は大胆で格好良くて、そのくせ笑うと幼く見えて可愛いくて、もうすぐ31歳だなんてとても思えない。

「もう少しだけ、このまま抱かせて」
優しく頭を撫でられる心地良さに負けて、私は川畑の胸に紅潮した頬を預けた。

味噌汁温め直さなくっちゃ…と思いながら目を閉じ、川畑の力強い鼓動を聞いた。
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