不協和音は愛の始まり
「ショパンのノクターン。13番ね」
リクエストは、日本語では夜想曲と言われるノクターンで、私が特に好きな曲だ。
けれど、聞こえて来た曲はいつもと違うメロディだった。
私はこの時に初めてノクターンにいくつも番号がある事を知り、驚いて愕然とした。
川畑と最初に聴いたノクターンを好きだと私が言ったら、川畑はいつもノクターンをリクエストするとそれを弾いてくれていた。
だけど、本当はノクターンと言ってもいくつも種類があって、それを知らない私に川畑が合わせてくれていたのだ。

知らないノクターンを聴きながら、その繊細で綺麗な音色が私の心の小さな傷に染み込んで行くようだった。
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