不協和音は愛の始まり
「川畑さんの手前右にご飯、左にお味噌汁、右奥が鯵の開きで大根おろしが左奥です。お醤油かかってます。お味噌汁は大根と人参と里芋と長葱、鯵はほぐして小鉢に入ってます」

見えない川畑にいつものようにメニューと位置の説明をする。
他に、グリーンティと林檎は欠かせなくて、いつも決まった場所にある。
川畑はいつものように頷いて、小さく舌打ちをした。

最初はびっくりしたこの舌打ちも、今ではすっかり聞き慣れた。
エコーロケーションといって、物の形や距離を音の反射で捕えているのだ。
視力を失ってから得た、聴力に優れているからこその能力だ。

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