4年目の贈りもの[短編]


「綺」



「ん?なに――」




振り向いたあたしの唇に、
陵の唇が優しく触れた。

思わず俯くあたしに、陵は優しい笑顔で続けた。




「一生忘れられない記念日にしてやるから。
楽しみにしてろよ?」




そう言った陵の笑顔を、あたしは一生忘れることはないと思う。




「じゃあー…楽しみにしときます」




そう答えたあたしの唇に、もう一度陵の唇が触れる。

目が合って、あたし達は笑い、また唇を重ねた。



こんな、たわいもない時間が好きだった。

こんな、小さなことでも幸せだった。


どんな、些細なことだって嬉しかった。


この幸せが、当たり前のようにずっとずっと続いていくのだと。

そう、思ってた。



そう―――信じていた。


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