ひとつ屋根のした?
そんなことを考えている自分がとても惨めに感じる。
『持っている人』と言うのは、往々にして、その事実に気がつかないものだと思う。


「じゃあ、明日俺と出掛けない?」

そう、木綿が言った瞬間、けたたましい携帯の着信音が空気を切り裂いた。
この、素っ気ない初期設定から変えていないような音楽は私のだ。
誰かと思い携帯を確認するとお父さんからだった。
「ごめん、木綿。ちょっと出てくる。」
だから、話は後で、というニュアンスを含め、電話に出るために部屋の外へいく。

大半の生徒が帰省しているため、当然廊下にも人影は見当たらない。
携帯を開き、着信を受ける為の電話がかかれたボタンを押す。
「もしもし。」
『もしもし、カンナか。』

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