ひとつ屋根のした?
『どうして私のことを好きになって下さらないの?』

袴を穿いた女の人形が言う。
このBeautiful Worldのヒロインのタエコだ。
この話は、大正時代、主人公であり寺の坊主のボーズが、華族の娘である已沼 耐子(やみぬまたえこ)から懸想されるが、断る。タエコはそれを苦に自殺し、ボーズはその音量に悩まされる。しかし、ボーズの法力によりタエコは終には成仏するという、なんともまあ外国製と言った映画なのだ。

このアトラクションは、映画の最大の見所である寺の裏の墓地で、ボーズがタエコに追いかけられるところをトロッコに乗って体験しようと言うものだ。

薄暗いし、日本の墓地のはずなのに十字架のお墓あるし、なにやらめちゃめちゃ怖い妖怪のようなおじいさんはいるし。

なんていうか、怖い。

「俺、これ始めて入ったけど全然怖くないなー。」
なんて、隣で木綿が言っている。
怖くないの?
「・・・っそっそうね。」
怖がっている事を悟られたくなくて、気丈にふるまう。

タエコが後ろから、奇声を発しながら追いかけてくる。
青白い顔をして、目は白目のほうが多いのではと思うほど見開かれていて、口の端からは血が流れている。極めつけは、乱れた髪からその顔が覗いていることだ
「やっぱり原作が子供向けだしなあ。」


「っそうね。」
音楽が止まったかと思うと急になり始めて、そのたびにびくびくとしてしまう。

突然、腕が上から降ってきた。

「ひっ!!」
機械で操られているからすぐに引っ込んだけれど怖かった。
手には、血がついていて、よく悲鳴を抑えられたなあと思う。
一人だったら失神ものだ。
「これ乗り終わったら何に乗ろうか。」

「っそ、そうね、何に乗りましょうか・・・」

そのとき、まさに頭上からタエコの顔が出てきた。

「っき、ぎゃあああああああああああああああああ!!」
叫んだ瞬間、私は我を忘れてしまった。




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