ひとつ屋根のした?



「ひっく、ひっく。」
私たちは、アトラクションから出て、近くのベンチで一休みを取っている。

「カンナ、怖いの嫌いなら嫌いって言えよ。」
呆れた顔で木綿が言う。
「嫌いじゃないわよ。」
「嘘付け。」
「嘘じゃないわよ。さっきだって全然怖くなかったもの。」
「じゃあ何で、泣いてるんだよ。」
「楽しくて、感慨あまって涙が出てるのよ。」

我ながら、なんて意地っ張りな性格かと自分でも呆れ返ってしまう。

「はいはい、じゃあ次はカンナが楽しめるやつにしようか。」

「さっきので十分楽しんだわ。」
「時間的に後ひとつは乗れそうだし何にしようか。」

着いたのが昼を過ぎていたから、もう、夕方だった。なるほど、もうあまり長居は出来ない。

「君たち、暇?っていうか暇でしょ?」
頭の悪そうな声が聞こえてきたので、声の下方向に目をやると、いかにも頭の悪そうな、ちゃらちゃらとした男二人組みがいた。

「木綿、行こう。」
それを見た瞬間、私は立ち上がり、木綿の手を引いて歩き出した。
こういうのは、無視が一番。


「無視しないでよ。二人ともめちゃくちゃかわいいね。女の子二人で来てるの?
奇遇だね。俺らも男二人で悲しくSWL来てたんだ。ここで会ったのも何かの縁だし、一緒に回ろうよ。」

無視して歩いていると言うのに、男たちは着いてきて話しかけ続ける。
周りの人を見ると、自分じゃなくて良かったという顔をしている。助けてくれたって良いのに。

「名前なんていうの?俺は、良太。こっちは健二。良ちゃんと健ちゃんって呼んでね。」

「私たち先を急いでいますから。」
そう言って、男たちを振り切ろうとすると、

「つれないなあ。名前くらい教えてよ。あと携帯の番号とアドレスも。」
私たちの目の前へ一人が来て、真後ろにもう一人が来た。
これじゃあ逃げれない。
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