ひとつ屋根のした?
それを見た瞬間、胸が締め付けられて、なんだか、泣き出しそうになってしまった。

幸い、観覧車は私達の現在地からそう離れてはいなかったので、すぐに着いた。それに、人もほぼ並んでいなかったので、すぐに乗れた。

「約二十分の空中飛行をお楽しみ下さい。」
係りの女性がそう言って、前にいる木綿を、まず、観覧車の中へ促す。
木綿が入った事を確認すると続けて、私を観覧車へ導く。
踏み外すのが怖くて、足元ばかり見ていたら、
「カンナ。」
と木綿の呼ぶ声が聞こえて、前を見ると、観覧車の中から木綿が手を伸ばしていた。
掴まってというように。

躊躇いはしたが、観覧車に乗れるタイミングを逃してしまうと思い、素直に木綿の手を掴む。

その瞬間、どくんと心臓が大きく揺れた。

< 56 / 77 >

この作品をシェア

pagetop