ひとつ屋根のした?
『木綿、何言っているの。』
しなやかに笑う彼女が頭の中で思い出され、気分が沈む。
入学直後は思い出すことは少なかったのに。
つり目のカンナとは対照的に、少し垂れた大きな目。
指の先から、笑い方まで鮮明に思い出せる自分に嫌悪感を抱いてしまう。

ああ、あの家に帰りたい。
カンナと自分が織り上げるつつしまやかな家に。
そう思うほど、俺はここの暮らしになじんでいるんだな。



がらり、戸の開く音とともに、担任が入ってきた。いらない荷物までくっつけて。



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