ひとつ屋根のした?
「木綿、木綿!」

はっ。と目を覚ますとカンナが心配そうに覗き込んでいた。

「大丈夫?木綿、ひどくうなされていたけど。」
カンナと俺の部屋――つまり俺の『家』のベッドで転寝をしていた。
カンナの顔を見ると、安心した。まるで、小さい子が、迷子になってようやく自分の家に帰るときみたいに。
家ってそういうものなのかな?

「うん。大丈夫。へんな時間に寝てたからいやな夢見たみたい。
心配かけてごめん。」
そう言うと、カンナは見る見るうちに頬を赤く染めて、ふいっと顔を背けた。
「どっどうも!!
もう、晩御飯の時間よ!!さっさと行くわよ。」
すたすたと歩き始めてしまった。
もう、晩御飯の時間か。

そう言えば、カンナが俺のスペースに入ってきたのは始めてかもしれない。

ふと、自分の机の上を見ると、あの人からの絵葉書が置きっぱなしにしてあるのが見えた。
こんなものが届いたから、こんな夢を見たんだ。

机の奥にしまっておこう。


「木綿、早く。」

「あっ、うん。今行くよ。」




灯る火は、足元を照らす。


被害者にも、加害者にもなれず
暗闇に埋もれたままだ。
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