ひとつ屋根のした?
「紫院堂。」
そう呼ばれて振り返った先には数学の教師三鷹がいた。
年はまだ二十代後半で整った今風の顔をしている。はるちゃんも整った今風の顔
をしているけど、この男はそれを年相応に大人びさせた感じだ。
それに加え、カジュアルにスーツを着こなす姿から女子に人気が高いが、男子か
ら好かれていないと言うわけではない。
気取らない性格、何でも相談できる雰囲気から生徒に広く好かれている。

でも、私は例外。



「何ですか。」
振り返り、そう尋ねると、三鷹はニヤニヤと嫌な笑いを携えて私を見てきた。
この笑いかたが嫌なんだ。

溺れる魚を見つけたみたいに。
さも愚かだと言うように侮蔑を含んだ眼。
「学年で二人だけだったぞ。この間の中間テストで満点を取った生徒は。」
ニヤニヤといやな笑い。

「はあ。」
だからなんだって言うんだ。
まるで、からかわれているようでいらいらする。


「絶対に満点者は出ないと思ったんだけどな。
がんばったな。」

と言うか、誰がもう一人の満点合格者なのかが気になる。

「ありがとうございます。
誰が、もう一人の満点合格者なんですか。」


そう尋ねると、三鷹は、少し色をはらんだ笑顔で、口元に人差し指を添えて言った。
内緒話だといわんばかりに。

「秘密。」

三鷹の眼が、惚れたはれたを含んだものになっていて、

ああ、いやだ。


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