ひとつ屋根のした?
「カンナ、なんだか元気がないようだけど、どうかした?」

見上げると、はるちゃんが心配そうに私を見ていた。

放課後、はるちゃんの部活が始まるまでの少しの時間に学校のテラスで話をすることが、私達の日課になっていた。


夕方に差し掛かり、朱色の絵の具をこぼしたような空。
今日、どんなことがあった、誰とどんな会話をした、そんなたわいもないことを私ははるちゃんに話す。

これは、小さい頃からの私達の習慣。
どんなに些細な事でも、はるちゃんは耳を傾けてくれて、真剣に考えてくれる。
だから、私もどんな些細なことだってはるちゃんに預ける。
小さい子供が母親にするように。


「私、やっぱり、恋って良くわからないなあ。」
「突然だな?」

「だって、よく分からないもの。
好きってどういうことなのか、付き合うってどういうことなのかよく分からない。」

「また、哲学的なことを言い出したな。」
苦笑しながら、はるちゃんは言う。

「はるちゃんは、千春さんをどんな風に思ってるの?
好きだって思ってるから付き合ってるんでしょう?
それは、どんな風に好きなの?守ってあげたいとか、かわいいとか?」
千春さんは、はるちゃんの彼女だ。
中学生の頃から付き合っていて、今は、星華学園と同じ市内の病院に入院している。

「そりゃあ、好きだから付き合ってるんだよ。
どんな風にって。難しいな・・・・・。」

「難しいの?
だって、はるちゃんは千春さんが好きだから付き合ってるんでしょう?」
そう尋ねると、はるちゃんは、目を細めながら、下を向いて考え込んだ。
「・・・・・・・・・そうだなあ、」

細めていた目をしっかりと開け、微笑みながら私と眼を合わせながら言った。
「俺の場合、こいつなら許容できるって思ったときが、好きだって思ったときかな。」

「許容?」


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