死生系譜
「二人とも…大丈夫かな…?」

俺の準備が終わるまでソファーに座ってもらっていたが、不意に後ろに立っていた。

俺は振り返る事無く言葉にする。

「…アイツの事だ、下手すればアイツだけで犯人ボコって恵子連れて帰ってくるかもな」

俺は有り得ない予想を口に出していた。

翔なら…。

何て思いたくなるのは人の性だろうか。

頼れるあの人ならどうにかしてくれるかもしれない。

この人なら…。

そうやって逃げようとしてしまう。


だが、今はそれで良いのかも知れない。

今の彼女は不安で締め付けられている。

そんな希望も持てないくらいに。

だったら、まやかしだろうと、希望を持たせて上げた方が良い…。

そう思いたい…。
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