林檎と蜂蜜
林檎と蜜蜂と蜂蜜
ずっと一緒だったのに、先に彼女を作ったのは、隆司だった。

「俺、彼女できるかも。呼び出されててさ。だから今日は梨紗と帰れない。」

衝撃は大きかった。

ハンマーで後頭部殴られた気分。

でも、そんなの関係なくて。ここで泣いたらバレる。

口角をあげる。あたしの顔に効果音をつけるなら、「にっこり」。

「…そっか!おめでとっ。私も早く彼氏つくろーっと。」

「、あの」

「よし、今日は猛と帰ろう。ちょっと誘ってくるね」

「梨紗、」

隆司の何か言いたげに呼び掛ける声を振り切って、教室を出た。

好きだった、ずっと一緒だと思ってた、のに。

目頭が熱くなってきたから、足早に図書室に向かう。失恋が原因で一人で泣くとか、悲しすぎる!


向かうのは、本の虫が棲むところ。彼は今日も一人で読書に耽ってるはずだ。

私の鞄についてるミサンガが揺れた。ずっと仲間だよっていう、3人の約束。
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