林檎と蜂蜜
僕は梨紗をずっと見てきた。だから、どうしたら嫌なのか、嬉しいのか。隆司よりは理解している、つもり。

梨紗はわかってるんだ。それで、彼女達を怒らせたくない。変に波風を立てたくないんだ。

「全く、女の子って恐いね。」

紙コップを置いて、無造作に本を触る。指からパラパラとページが滑り落ちていく。

僕は梨紗がそれでいいって思ってるなら、それでいいと思うんだけど。

「だから、その為にもどっちかに女つけといたほうがよー」

「うーん…。」

それじゃ、梨紗はもっと苦しむと思うんだけど?

喉まで出掛かった言葉を飲み込む。隆司にはまだ教えてやんない。

「予言しよう。」

「は?」

僕は真剣な表情を作って、隆司を見据える。唐突に僕が変なことを言うから、隆司は何言ってんだコイツって顔で僕を見返している。

「隆司に彼女ができたら、梨紗は多分隆司と距離を置くよ。」

「…なんでそうなるんだよ。」

隆司の眉間に皺が寄り、テーブルから身を乗り出してくる。僕の口角があがる。

「ま、試してみなよ。」

僕は本を学生鞄に詰め込んで、席を立った。珈琲が入っていた紙コップはダストボックスに突っ込んだ。
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