林檎と蜂蜜
「うん、梨紗のことを想ってそうなったんじゃないかな。本気で作る気はないと思う。」
「なんで、私がでてくるの?」
「だって、僕らと一緒にいるからって梨紗が嫌なことされるなんて、隆司が許すと思う?」
「……。」
返す言葉が見つからなくて、私は俯いた。
「僕は嫌だな、梨紗が僕と一緒にいるからって苦しむなんて。」
猛が私の頭を優しく撫でる。嘘でも咄嗟に慰めてくれる猛はやっぱり優しい人なんだと思った。
「そうなのかな…、なんかごめんね。…ありがとう。」
「いーえ。どういたしまして!」
へらりと笑う猛。それに吊られて私の顔も表情が緩んだ。
「あーぁ、目、腫れちゃってる。」
猛はそっと手を伸ばし、私の目の下を指でなぞる。流石に、これはちょっと。
「た、たけ、恥ずかしいからいいよ」
止めて、とは何となく言いにくい。
「そ?」
屈託のない笑顔の猛は、下心なんてものをそもそも持ち合わせてないんじゃないか。そんな風に思ってるから、私は猛に女友達の親友みたいに接してしまう。
「帰ろっか。」
「うん。」
猛が本を鞄に詰め、私に手を差し出す動作はとても自然で、そのまま手を繋いで私達は図書室をあとにした。