林檎と蜂蜜
人気のない廊下を無言で歩く。朝とはいえ、いつも生徒がいる廊下に誰もいない、というのは結構不気味だ。
何を言われるんだろう。私は小川さんの後ろに続く。小川さんの進む先は、確か…。
「ここなら、人も来ないから。」
顔をあげると、引き戸の上に第3自習室、と書かれているのが見えた。
なんで此処?
「さ、入って。」
自習室は予約制。第1〜10までは、4畳くらいの狭い部屋で、机がひとつと椅子がふたつあるだけ。素っ気ない部屋だけど、空調完備で後片付けさえすれば、飲食物も持ち込みオッケーだから、なかなか居心地はいい。
「…それで、どうしたの?」
何を言われるんだろう。話したこともないのに、個人的な話なんて、普通に考えておかしいよね?