最終地点
梓は生まれたときから知っている。16年間、ずっとこのマンションでお隣りさんだ。

好きだ、と自覚したのはいつだっけ?最初はありえねぇ、って自分否定して女囲って。自己嫌悪に陥ったっけ。

だって5歳も年下だぜ?俺が中3のときあいつまだ小4だぜ?そりゃあねぇだろ。犯罪チックだ。

昔と今とで変わったことといやあ、梓も俺も成長したってこと、俺の女遊びが我慢出来なくなったときだけになったこと。

それ以外は何一つ変わってない。梓のあの顔を見て、自己嫌悪に陥って。

「…葉太?」

そこで我に帰る。彼女との情事のあと、煙草を持ったままトリップしていたことに気付く。重症だな。

「わりい。美奈子、あのさ、」

「うん、わかってる。」

「え、…何が?」

予想外の返事に俺は目をしばたたいた。美奈子は自分の身支度を整え、淡々と話す。

「別れ話でしょ。今日なんかいつもにまして上の空だったし。」

女の勘ってすげぇ。あらためて感嘆する。持ったままの煙草が短くなったので、灰皿に押し付けた。

「…わりぃ。」

「最初からそういう約束だったしー。」
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