最終地点
ピーンポーン。と軽快なインターフォンの音が扉付近の空間に響く。ぱたぱたぱた。スリッパで小走りにこちらへ向かう足音が聞こえる。これは多分。

「はいはいー。あら、葉太君こんばんは。」

案の定だ。梓の母親の飛鳥さんがエプロン姿で登場した。

「こんばんは。梓居ます?」

「梓ねー、今部屋に引きこもってるのよ。まだまだ子どもねぇ。」

ふふっと笑う飛鳥さんは、もう40歳過ぎてるはずだが、まだまだ若いなぁと思う。

「お邪魔してもいいですか?」

「どうぞどうぞ!」

玄関入ってすぐ右の部屋が梓の部屋だ。俺と飛鳥さんのやりとり、聞こえてたくせに出てきやがらねぇ。

「梓?はいるぞ。」

一応ノックして勢いよくドアノブをまわす。ドアを押そうとしたら抵抗を感じた。

「入ってこないで。よーちゃん今は立ち入り禁止。帰りなさい。」

「何言ってんの。ここ開けて?」

「彼女とイチャイチャしてきたくせに。」

「ん。それが今日フラれた。」

不意に抵抗力が消えて、ドアが勝手に開いた。

「…なんで?」

目を丸くした梓がドアから半分だけ顔を出して、俺の顔を下から覗き込む。それにあやかってドアをこじ開けて中に入る俺。

「ちょ、よーちゃんっ」

「俺のほうが聞きてぇよ。梓のバーカ。」

可愛すぎだっての。

「知らないよ。よーちゃんのアホー。」

6畳間の部屋には、ベッドやら勉強机やらが置いてあるので、あまりスペースはない。仕方なしに柵のないベッドに腰掛けると、脛を蹴られた。
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