来る来る廻る


佐々木は、ある方向を見ていた。

立ち止まり、目が釘付けになっている。

視線の先は何?何があるの?誰がいるの、そこには?

と、佐々木が私を見た。
「ひなこ、ここでちょっと待ってて」

と佐々木は、小走りでビルの中に消えた。

  ?????

色んな店が集合するテナントビル…エレベーターは一階で停まっている、どうも乗った形跡はなかった。

と言う事は、一階?

表の看板を見た。

スナックが数件、割烹に寿司屋、居酒屋…それと、何の店かわからない、ちょっと大きめの看板があった。

「ダンディーライオン」

多分これも、飲み屋に違いないと思うんだけど…何か不思議なセレブ的な…ラウンジかクラブ?

佐々木がビルから出て来た。

なぜ?肩が落ちている。眉間の皺は? 私の気のせい?

「どうしたの!何かあった?」

「ううん、別に…」

何かあったには違いないけれど…それが何なのかは想像もつかなかった。

せっかくいい気分だったのに…何かが邪魔している…誰かが邪魔している…女の勘がムクムクと動き出した。


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