来る来る廻る
おばあちゃんと私は戦友同士…負けた傷を二人で舐め合った。
ホームからの帰り際、おばあちゃんと二人して…停留所でバスを待っ。
バスが来るまで二人は、ベンチに並んで座り手を握っていた。
「おばあちゃん、また来るから、元気でいてよ」
「ありがとうよ、梨花もな、頑張るんだよ」
暫くしたら…バスが到着して二人を引き裂く。
私は、バスの一番後列に座り、後ろ向きになって窓越しにおばあちゃんを見る。
どんなに小さくなっても…ずっとずっと…その姿が見えなくなるまで…もしかしたら、私が次に会いに行くまで、まだそこにいるんじゃないかと思えるほど…おばあちゃんは、その位置に立っていた。
母と弟はほったらかしきり、敵国の見舞いには来る筈がなかった。
それから少しずつ…おばあちゃんの容態は悪くなっていき…老人ボケが始まった。
私を違う名前で呼ぶ。
ご飯食べたばかりなのに、このホームは食事与えてくれないと怒り泣く。
急に大きな声で歌い出す。
おばあちゃん、どうしたのよ! しっかりしてよ!
責めても叱ってもなだめても…あなたには届かない…。
生きながらにして…おばあちゃんが遠く離れていく…。