来る来る廻る


おばあちゃんは、寝たっきり生活になった。

ベッドの横に置かれた簡易トイレ……それを見た時は…目から滝のように涙が溢れた。

おばあちゃんは、そんな私の心情にまだ追い撃ちをかけてくる。

ニコニコ笑顔で歌い出すの……。

♪月がぁ~出たぁ出たぁ~月が出たぁ~♪

もう、二人でバスを待つ事は不可能になった。

あれは夏祭りの事……ドン、ドンと夜空に花火が咲く…。

赤…青…黄…幻想の火の花は、一瞬に咲いて一瞬に消える。

それは…宇宙から見た人間のよう…バックは哀しき黒いキャンバス………。

私は浴衣姿で、友達と空を見ていた。

蚊に刺された足を、浴衣の裾から手を入れて掻きながらの帰り道……家路に着くと、そこに弟が立っていた。

「姉ちゃん…おばあちゃん死んだって…」

それは…中学一年の夏休みだった。

おばあちゃんの花火は何色だったんだろう……。

その年の秋の終わりかけ……ワルの先輩に呼び出された。

私の目付きがきつい、生意気だ、ヤキを入れてやると…数人から殴られ、蹴られ…生まれて初めて気の失うような痛みを知った。

それでも、おばあちゃん亡くした痛みには…敵わない。


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