来る来る廻る


リンチ受けた私の顔面は血に染まった。

鼻血まみれ…口は切れ…その時差し出された物は…消毒薬ではなく…一本のタバコ…初めて吸った。

初めて吸ったタバコの味は今でも忘れない…錆びた鉄…そぅ、血の味だった。


その日から、私はそのグループのメンバーとなった。

子供が階段の手すりを体で滑るように…すーっと悪の道へと落ちて行った。

先輩達といつも連れたっていたから、同級生なんて誰も恐くなかった。

と言うより、私に逆らう者は誰もいない。

酒、タバコ、シンナー、覚醒剤、万引き、恐喝…とワルのフルコースを、私は猛スピードで覚えていった。

  梨花、何で?
  どうしてよ?

ただ何となく…じゃない、私には、はっきりした理由があった。

   ざまぁみろ!

これは、母に対しての復讐だった。

戦友に戦死されたこの哀しみが…お前にわかるか…簡易トイレを見たあの日の悔しさを、お前には、違った形でお返ししてやりたい。

梨花よ、どんどん、どんどん悪くなれ…。

母よ、もっともっと、世間で恥をかけ…。

そうして…自分の生き方を…自分の子育てを…後悔しろ……。

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