来る来る廻る


長女4歳、次女3歳…の時…普通に不幸になった。

冷たい雨……前の晩からシトシトと…朝になっても降り止まず、執拗な雫は…俺達4人を奈落のどん底に押しやった。

「じゃ、行って来るよ」

「パパ行ってらっしゃい」

幼稚園服姿の娘二人に、俺は見送られた。

菜々子はその時、洗い物をしていた、後ろ姿で……。

「行ってらっしゃいね、気を付けてね」

こちらを見る事もなく、俺の見送りは子供に任せ、菜々子の視線は汚れた食器…両手は…見えなかったが、白い泡に包まれていたと思う。

いつもの朝の情景だった。

何でもない普通の朝だった。

でも…これが最後の菜々子だった。

その日は、雨のせいで営業に行くのも躊躇い、せめてもう少し小降りになってからと、会社で事務仕事済ませていた時だった。

  携帯が鳴った。

  警察署から…。

子供を幼稚園まで送り届けた帰り道……菜々子が大型トラックにひかれたと……。

    嘘だろ?

  そんな訳ないよな。

  何かの間違いだろ?

視界の悪かった暗い朝、一台のトラックは、菜々子をあの世に運んだ。

透明の雫が真っ赤に染まった……。


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