来る来る廻る
まだ菜々子が生きていた頃、営業回りしていた時…偶然街で見かけた奴は、新型のBMWに乗っていた。
一つ年下の尾崎とは、子供の頃、家が直ぐ近くだった事もあり、親子共々、近所グループで仲がよかった。
ホストになったと噂は聞いていたが…ナンバー1をはっているとは知らなかった。
クラブ「ダンディーライオン」 拓也 と印刷された名刺を貰った。
なるほどなぁ…奴は昔から面が良いことに、女にはよくモテていた。
結構遊び人で…本当に、容姿、性格とも、こいつはピッタリな職業を選んだものだと感心した。
尾崎は言った。
「俺さ、今、金には不自由してないんでね、何か困った事あったら、いつでも相談にのるよ」
「ありがとうよ」
尾崎は学生当時、かなりのワルだった。
勉強なんてこいつには無縁の世界だった。
進級や、高校卒業も難しい時、俺は付きっきりで勉強を教え、何度も助けてやった事があった。
それを尾崎はずっと覚えている。
俺が困った時に借りを返したいと…威張る事なく、気持ちから言ってくれた。
が……何も困った事なんかあるもんか…こいつに頼る事など何一つないや…とその時は思っていた。