来る来る廻る
ホストクラブ…って所は、ツテもなしに飛び込んでいたら…こんな優遇はなかった。
ホストの見習いなんて、僅かな金しか貰えず、それに使い走りから始まり、過酷な修行を積まなければならない。
拓也を指名する客が幹なら…幹が連れて来た客を枝と呼ぶ。
俺にも、チラホラと枝がつき始め、枝が幹なしに単独で来るようになり、徐々に指名の数が増えていった。
週2のバイトが週3になり、休みの日でも、客が来たら急に呼び出しがかかったりと…昼夜の仕事の両立はかなりきつくなっていった。
営業サラリーマン、あくせく働いたところで、年収400万に満たない。
ちょうど、拓也の月収の額だった。
その上、拓也は店の収入以外からも、客連中から、あぶく銭や品を貰っていた。
サラリーマンは、どんなに頑張ろうが、天井が付いているが…ホストの世界には天井がない。
天の高さは、自分のやる気とやり方しだいだった。
そして、俺はこの天に、ある大きな目標を貼り、夜の世界一本に絞った。
キッチンバーを開業してみせる。
店の奥を住居にして、子供の側にずっと居てやれる店を持つ。
この世で果たせなかった菜々子の夢を、俺が実現してやる。