来る来る廻る

女の子の節句に、お父さんが雛人形を買ってきました。

娘は大喜び、三人で甘酒酌み交わし、ひし形のお餅…黄緑はお父さん…桃色はお母さん…白色は娘…美味しく頂きました。

三人の幸せな時間を思い出した。

思い出に浸りながら、涙が溢れ出す……。

止めどなく流れる、命の泉……。

 誰も知らない…。

 誰も見てない…。

 心が作る塩水…。

零れ出てきて止まらない……。


私は、再び押し入れの襖を開けた。

そして…雛人形を引っ張り出す。

元の位置に…茶箪笥の上に再び置いた。

御内裏様は父で、御雛様は母…その場所で、私を見守っていて…いつまでも…例え、嫁に行けなくても……。

あなた達の場所は、そこよ………。


長く短い一ヶ月が終わり、私は仕事場に向かった。

「いらっしゃいませ」
店員達が、それぞれに大きな声を出した。

 ?どうゆう事?

私はお客さんじゃない!

   ここの店長よ!

  私は女王よ!

と、皆の驚く顔???

「店長ですかぁ?」

えっ? どうして?

一ヶ月そこらで、私をお客と間違える訳?

何で? そんな驚いた目で私を見てるの?


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