来る来る廻る
胃に…正確に言うならばみぞおちの部分に…ズシッと重たさを感じた……。
この感覚は何?
仕事が再開した。もう家で待つ人は誰もいない。
一人で起きて、朝食をとり、鍵を閉め仕事に向かう。
淡々と任務をこなし、帰宅して、自分の為だけに夕食を作り、それを体に入れて、お風呂に入り、連続ドラマを見てから寝床に入る。
次の日も、その次の日も…そのまた次の日も、同じリズムが繰り返される。
幸と不幸の境目がわからない生活…楽しみも哀しみもない時間の流れ……。
「おはようございます」
朝一の出勤を、ガラス拭きしていた佐々木が迎えてくれた。
「あっ、おはよう!感心ね」
私は、いかにも人生の先輩面で、この店の親分面で、佐々木の横を通り過ぎた。
堂々たる女王の足取りとは逆に、私の胸中はなぜかビクビクしていた。
このアルバイト佐々木との近距離だけに、心臓がやけに反応する。
この反応は何?
何十人もの社員やアルバイトを、今まで指導してきた筈なのに、無感情のままマニュアル通り、私は上手く、人材を動かしてきたつもりだった。
なのに、この佐々木だけは上手く使えない。