来る来る廻る
32 野田亜紀子
  ●野田亜紀子●

最近、直也が優しくなった。

何があったのか、どんな心境になったのかは知らないけれど…私によく話してくれる。

前に比べ、尚いっそう直也の世話に力を入れた。

栄養考え、凝りに凝った献立をテーブルに並べる。

掃除、洗濯、パジャマや下着にさえもアイロンがけを怠らない。

こんな尽くす女は、何処探したって多分いないと思う。

だって…頑張んなきゃ、私は選ばれし女だから……。

佐々木の行方…直也にあちこち聞いてもらっていたが…未だわからなかった。

近辺のホストクラブにも勤めていないみたい。

自分が幸せの位置にいると心は落ち着き、余裕が生まれ、人に優しくなれる。

私は、吉田ひなこの事を思った。

あまりにも不憫で哀れで可哀想だ…と思っていた時、直也から、ある話があった。

ホスト仲間が今度、店をオープンするらしい。

それはランチからディナー、そしてナイトにはお酒も出す、キッチンバー。

2、3人、スタッフを募集しているので、その女性に声かけてみたら…と言う話だった。

吉田ひなこに電話した。

留守電応答…メッセージを入れたが、待っても連絡は返って来なかった。


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