来る来る廻る
私は無言で、ジョッキ片手に、焼き魚をつついていた。
仕事では偉そうに出来ても、こういった場所、遊びの世界で私は、まるで幼稚園児だった。
「店長、今日の珍しい参加、いったいどうしたんですか?」
野田か意地悪そうな目付きで話しかけてきた。
「もう、家で待ってる母もいないから、筏(いかだ)から海に飛び込んだの」
「筏?」
野田が不思議そうな、怪訝そうな眼で私を見ながら言った
「それって…誰のギャグですか?」
「ギャグなんかじゃないわ。現実よ。自由海に飛び込んだって事、これから自分の好きなように生きようと思って…」
「ふぅ~ん」
周りが一瞬シラケた。
と話題は別の方向に行った。
会話に入れない…。
ついていけない私は、ただひたすら飲むしかなかった。
頭がクラクラしてきた。
目頭を押さえようと眼鏡を外した。
少し飲み過ぎたみたい…。
顔を上げた瞬間、どこからか視線を感じた。
と、我が席の一人がこっちを見てる。
野田の横、それは佐々木だった!!!
素眼だったから、ボヤけていたけれど、確かにこっちを見ている。
佐々木は視線を外さなかった。