来る来る廻る

二次会はカラオケボックスへ行く事になった。

軽い千鳥足の私を掴まえにきたのは、野田だった。

「店長、大丈夫ですか?今からカラオケタイムするんですけど…無理ですよね?タクシー乗り場まで送りましょうか?」

「私もカラオケ行くわ……筏にはもう戻らないの」

「はぁ……」


これがカラオケボックス…ソファーにテーブル、音響装置、歌う為の部屋だ。

と!佐々木が私の横に座った。

何で?何でよりによって隣に座るの?

何で近づいてくんのよ!

酔いが一瞬にして醒めるでしょ!


ジャンケンで負けた人から、時計回りに歌う事になった。

私は三番目になった。

ここまで来たけれど、人前で歌った経験はない…何を歌っていいのか、最近の曲も知らない…最近どころか昔の歌も……。

二次会の参加は、自由海初心者にとって、まだ無理だったのかな?


アルバイトの子が一曲目を披露、二人目も歌い終わり、私の番が回ってきた。

リモコン持って、私は曲探しの振りをする。
が、胸中はパニック、どうしていいかわからない。

  窮地だ……。

「店長…」

野田の声だった。

「早くして下さいよ、後がつかえてるんだから」


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