来る来る廻る

胸が高鳴る…ドキドキが止まらない…。

これを恋心と呼ばすに何と呼ぶのだろう。

そぅ、筏から自由海に飛び込み、浜まで泳ぎ、陸に上がった私は、この恋の落とし穴に落ちてしまった。


勇気を出して向かった先は眼科……生まれて初めてのコンタクトレンズ……。

小さな小さなレンズを、瞳に密着させた。

軽い痛みと違和感、それと不思議な感覚…体の一部分がもぎ取られたよう…。

今まで、眼鏡という隠れる衝立があったのに、なくなってしまった。

こんな素の顔で、歩けるのかな?

人と話せるのかな?

生きていけるのかな?

不安の津波が押し寄せる。

せっかく綺麗な目をしているのに……佐々木の声が木霊する。


コンタクトで初めて出勤した。

皆が見開いた目で私を見てる。

佐々木が側に寄って来た。

「店長、グーですよ」

 佐々木 仁(じん)
26歳…私を恋に落とした男………。


仕事帰り、コンビニに立ち寄り、ファッション雑誌を何冊か買った。

夕御飯も食べないで、雑誌に没頭した。

  研究課題は女。

髪をカットし、ゆるいウエーブパーマをかけ、カラーリングもした。 そこで、メイクも教えて貰った。

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