来る来る廻る
今から15キロも太っていた眼鏡ぶた、メガトンを佐々木は知らない。
想像もつかないだろう。
何か話さなくては、何か…ファミレスの女王らしくない…でも言葉が出ない。
佐々木が話しかけてきた。
「店長は、今の仕事、10年過ぎたんですよね?」
「えぇ、高校卒業してずっと同じ所、もう13年過ぎたわ。」
「へぇ~凄いんだ」
「何も凄くない。この仕事しか…他の事は何も知らないもの」
「結婚は?」
「まだ独身よ」
「へぇ~一度も?」
「戸籍は綺麗なままよ」
戸籍どころか、体まで新品だなんて、こんな格好の悪い事実、誰にも言えない。
「佐々木君は?26だったけ?今はバイトよね?これからの夢とかあるんだ?」
「これと言って、別に何もないっす…大学卒業して、一応、就職したんだけど、どうもサラリーマンには向いてなくて、それからプータロしてて、したい事探してる最中かな…で、取り敢えずバイトでもしなきゃ、家賃も払えなくて…」
「そうなの、一人暮らしなんだ?」
「もう、親の世話にもなれないし、中途半端な歳なんですよ。店長は、親と同居?」
「両親はもういないわ…私も一人暮らしよ」