来る来る廻る
こんな夜分遅くに、娘を電話口に出す事は出来ないと、母は冷たく低い声を出したかと思うと、ガチャンと受話器を置いた。
横で、私はその状況を見ていた。
氷の尖った破片で胸を刺されたよう…。
痛みと苦しさと冷たさの中に身を置いた。
彼は、チョコのお礼を言いたかっただけ、それに、夜の9時を夜分遅くって言えるの?
次の日から、彼は私に視線を合わせようとしなくなった。
ぎごちない空気が流れ、ふくらみかけた恋の風船玉は、しゃぼん玉に形を変え、はかなくパチンと割れ…そして…跡形もなく消えた。
恋心は悪い事、友達との付き合いも悪い事…朝起きて、真面目に登校し、授業が終わると真っ直ぐ家に帰る…掃除機コードのような生活を、母は私に望み、私はその望みに応えていった。
残された最後の楽しみは……食しかなかった。
学校から帰ってする事もなく…考える事もなく…マンガ雑誌を恋人に、毎日ポリポリクチャクチャと、カロリーの高い菓子を食べ続けた。
行動の結果…見事に、肥満体が一人完成した。
幼女の頃から、視力も弱かった。
それも日毎に悪くなっていき、眼鏡のレンズがだんだん分厚くなっていく。