来る来る廻る
「軽く飲みに行こうよ」
誘われた場所は、洒落た若者が集まるクラブだった。
暗くて…煙草の煙りが霧のように立ち込め、パチンコ屋と同じ、バックミュージックの音が大き過ぎる。
佐々木が、バーボンのロックを頼んだ。
私も同じ物…同じ空気の中、同じ視界で、同じ物を飲みたかった。
キツい酒も…あなたといると美味しいとしか感じない。
三杯お代わりした。
頭がクラクラしてきて、急に酔いがまわってきた。
ミュージックがレゲエから、スロー、ムードあるリズムに変わった。
隣にいる佐々木とは、側面が引っ付いていた。
ここは…夜空に浮かぶ雲の上…ふわふわ浮いている。
佐々木の唇が近付いてきた。
と…同時に甘い香りを漂わせて……この媚薬の香りは、きっと…母も経験したに違いない香り……。
何て誘われたか記憶がない。
果たして…口説きセリフがあったのか、どうかさえ覚えていない。
もしかしたら、言葉なんてなかったのかも知れない。
気が付いた時…私は…バスタブに一人で浸かっていた。
家のお風呂でない事だけは……確かだった。