来る来る廻る
待ち合わせ時間に、私は遅れた事がなかった。
いつも先に着いて待っている。
佐々木は、5分、10分遅れる事が普通になっていた。
その日、私はわざと、約束より15分も遅れて行った。
こんな細やかな抵抗も、私にとっては命がけの事。
寿司屋のカウンター、奥の席で、佐々木はビールを飲んでいた。
もう適当に注文して、箸も動かしているようだった。
横にそっと座った私は、佐々木の顔色を伺う。
「よっ!ここ久しぶりだよな」
佐々木は、やけに明るかった。
私は、ホッと安心した。
日本酒を頼んだ…それは、今日はゆっくりしたいと言う、私のセリフ代わり。
「お母さん、どう、大丈夫なの?」
「あぁ、何とか…もう歳だしね」
「でも、ちゃんと後悔しないように、親孝行しないとね。あれもしてあげたかった、これもしてあげたかったって…思っても、私みたいに…もういないと…取り返しつかない、どうしようもないもん…」
「あぁ、そうだね」
1時間ばかりが過ぎた。
佐々木は…何故かそわそわしてる…何かを隠してる…私にはわかるの…あなたが好きだから……。
気付かない振りして、私は話し出す……。
いつも先に着いて待っている。
佐々木は、5分、10分遅れる事が普通になっていた。
その日、私はわざと、約束より15分も遅れて行った。
こんな細やかな抵抗も、私にとっては命がけの事。
寿司屋のカウンター、奥の席で、佐々木はビールを飲んでいた。
もう適当に注文して、箸も動かしているようだった。
横にそっと座った私は、佐々木の顔色を伺う。
「よっ!ここ久しぶりだよな」
佐々木は、やけに明るかった。
私は、ホッと安心した。
日本酒を頼んだ…それは、今日はゆっくりしたいと言う、私のセリフ代わり。
「お母さん、どう、大丈夫なの?」
「あぁ、何とか…もう歳だしね」
「でも、ちゃんと後悔しないように、親孝行しないとね。あれもしてあげたかった、これもしてあげたかったって…思っても、私みたいに…もういないと…取り返しつかない、どうしようもないもん…」
「あぁ、そうだね」
1時間ばかりが過ぎた。
佐々木は…何故かそわそわしてる…何かを隠してる…私にはわかるの…あなたが好きだから……。
気付かない振りして、私は話し出す……。