悲しみと魔法と、そして明日と
「はっきり言ってガルフ隊長殿がボルグに勝てるとは思えませんね。それにユリさんを救出出来るほどの作戦を思いつくオツムもありそうでないですねぇ。あ、それは見た目ですが」

ブチンッ

ユウリはさらにガルフを煽った。さすがのガルフもその発言に完全に切れてしまった。

「貴様あああああ!!!」

ガフルはユウリに斬りかかろうと、腰に提げている細身のレイピアの柄に手を伸ばした。

刹那。

シャッ!!

レイピアが光った。

ガフルの右手にはレイピアは無い。納まっているはずの鞘にもレイピアは無い。右手は空しく空を切る。

白銀に輝くレイピアは今にも触れてしまいそうなガルフの首筋に存在した。それを握るのは漆黒。

「動くな。その安っぽい頭がトぶよ?」

リクは一瞬でガルフの真横に移動し、ガルフのレイピアを抜刀したのだ。ナツ、警備隊員、ガルフですらその姿を追うことが出来なかった。

異常事態に他の警備隊員は焦りながら抜刀しようと柄に手を伸ばした。

「あんたらも動くな。俺たちは別に殺し合いに来たわけじゃないんだよ」

警備隊員達は背筋が凍った。つい先ほどまで目の前で座っていたショウが腕を組みながら自分達の後ろで壁にもたれていたのだ。

「ショウ、リク、もういいですよ。お座り」

「お座りって・・・わしらはイヌか」

チンッ

リクはレイピアをガルフの鞘に戻し、ショウは警備隊員の間を抜けてユウリの両隣へと座った。
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