悲しみと魔法と、そして明日と
「まぁ多くの龍種が存在する中でなぜ飛龍だけにそのような神々しい言い伝えがあるかは知りませんけどね」

リクは最後にあどけなく笑った。その笑顔は見るものを吸い込んでしまいそうに魅力的で儚いとナツは感じた。

リクの言葉を引き継ぎ、ショウが言った。

「俺たちは飛龍の親子のようにこの先に生きる人たちに世界を繋げたい。そして俺たちの様な人間を増やさないためにも、俺たちに出来る事に全力を尽くす。それだけだ」

ナツは3人から目を離さない。何かを考えた表情の後に口を開いた。

「・・・その為には名を上げ、上を目指し、根本を変える必要がある。か?その為の足掛かりとして私を、私の妹を踏み台にする気だな」

3人は心臓が口から飛び出そうになった。ナツの言った事は悪く言えばその通りなのである。自分達にその気がなくてもそうなってしまうのは解っていた。だが、それを言い当てられるとは思いもしなかった。

「言い換えればそう聞こえるかもしれません。私達にそれを否定することは出来ない。だが信じてくれ!私達はあなたの妹を救いたいという気持ちは本物だ!!」

ユウリが初めて声を荒げた。その瞳には強い想いが溢れているのがわかる。彼には大切な年下の弟妹がいるのだ。ナツの3人を見る眼差しが強くなった。沈黙が流れる。

「ふふッ・・・アハハハハハハ!」

急にナツが笑い出した。いつもの大人っぽい表情と違って少女のような笑顔である。ショウ達はぽかんと口を開けたままナツの笑いが止まるのを見つめた。

「いやすまない、ふふ、お前達の様な清々しいヤツらには初めて会ったよ。とても気に入った」

ナツの笑顔は美しい。

「僕はそんなあなたが大好きです」

とりあえずショウとユウリはリクを窓から投げ落とした。ちなみにここは2階。
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