やくざな主人と生意気ペット
「お前、あとちょっとで騙されるところだったんだぞ」
「あたしを騙す?何のために?利益なんて無いじゃないすか」
あたしは当然の事を言ったつもりだったが翔さんは呆れてため息を吐いた。
「馬鹿者。お前は神無月さんの女だろう」
「勝手にあたしをあいつの女にするな」
「周りからはそうとしか見えんのだ。これが厄介なんだよ」
「意味がわかりません」
「お前なあ…」
翔さんはまた、ため息を吐く。
「お前から神無月さんの情報を聞き出すんだよ」
ほう。色気で敵を翻弄して陥れる。
だからハニートラップ、てわけ。
……普通逆じゃね?
女が男を、じゃね?
「じゃ、さっきのイオン男は…」
「別の業者」
鳥肌が立つ。
神無月さんを見ていても本当にやくざをしているのか疑問に思うことがある。
『死』とか、あまり関係ないものだと思ってた。
なのに今はそれが身近にあるように感じられる。
「送っていく」
翔さんが短く言ったと同時にポケットで携帯電話が震える。
着信、神無月。
今はなんとなく出る気になれなかったが、翔さんに目で促され、ボタンを押す。
「もしも…」
「米がカタい」
知るか!!
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