やくざな主人と生意気ペット
話を聞くと内容は大体こうだった。
一週間ほど前、アスカさんが家に遊びに来て一緒にテレビを見ていた。
元々こはるは何事にも無関心でテレビもあまり見ないのだが、たまたま流れたCMの曲に興味を示した。
それを見逃さなかったアスカさんが後日、そのアーティストの曲が入ったこのプレーヤーとCDをプレゼントしてくれた、ということだ。
「良かったじゃねぇか」
これは本心。
こはるは昔からこっちが心配になる程何に関しても興味を持たないのだから。
好きな食べ物も無ければ趣味も無い。
俺にだって好物ぐらいある。
だからこはるは毎日何を楽しみに生きているのかと、真剣に悩んでいた時期もあった。
こはるが幼い頃はあまりにも何にも興味を持たないので怖くなり、同じ裏業界の精神科医に看させたこともある。
「すっかりファンなわけだ、こいつらの」
こはるがさっきから後ろに隠していたCDを取り上げ、指差す。
途端に赤くなるこはるの顔。
「返して下さいってば」
「別に恥ずかしがる事じゃねぇだろ」
「だって…神無月さん馬鹿にするでしょう」
「しねぇよ」
「嘘だ」
「そんなしょうもねぇ嘘つくかよ」
こっちは本気で安心してんだよ。