やくざな主人と生意気ペット
あたしの両親は気付いた時にはいなかった。
でも、きっといたはず。
でなきゃあんな夢、何度も見ない。
神無月さんのとこに来てもう何年も経つけど、未だにコイツについては知らない事だらけ。
背中が"聞くな"って言ってる。
「おい神無月」
「口の利き方」
後ろを向いているけれど、多分いつもみたく眉間に皺を寄せてる。
仕方ない、今だけの辛抱。
「神無月さん、あたしには家族っていないんですか?」
「……」
暫しの沈黙。
やっぱり聞いちゃいけなかったか。
「その内わかる」
「え?」
想定外の答えに、正直戸惑う。
意味がわからない。
詳しく聞こうと思ったけれど、すぐやめた。
闇に溶け込む、黒のスーツを着た背中が"聞くな"って言ってるから。
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