やくざな主人と生意気ペット
「神無月さんの弱点ってか苦手なものってさ、生きた子供でしょ?」
「はぁ?」
「仕事柄死んだ人間は何とも思わないでしょ?」
まあ言われてみりゃそうだな。
「で、仕事柄子供とふれあったりする機会がない」
それもそうだ。
「駄目じゃないすか、やくざが子供怖いだなんて」
「怖くねぇよ」
「はいはい」
そう言ってこはるはイヤホンをはめ直し、再び自分の世界に入っていった。
家事も全てやり終えてはいるので仕事しろ、などとは言えない。
そろそろ日が暮れる。
今夜もつまらない仕事をこなさなければならないと思うと、こはるが羨ましくなる。
「行ってくる」
いつもなら上着を持って玄関までついて来るのに、「いってらっしゃい」の言葉もない。
趣味ができたのはいいが極端過ぎるだろう。
ハンガーに掛けられた黒の上着を自分で取り、家を出る。