加納欄の出会い シリーズ2
そのまま、ハンドルを右へ回したり、左へ回したり、車はいろんな道を突き進みながら、一軒の大邸宅に止まった。

「館山組だ。怖いなら来なくていいぞ、チビ足手まといだからな」
大山さんは、車から出ると勢いよくドアをしめた。
あたしも一緒に外へ出た。
大山さんは、あたしの顔をじっと見て。
「剣道か柔道でもやったことあるか?」
「いえ。剣道も柔道もたしなむ程度で苦手な分野です」
と、答えた。
大山さんは、ハァ~っとため息をつくと。
「だろぅな。危ねぇから車に乗ってろよ、チビ」
と、言った。
「いえ、仕事ですし」
あたしは、大山さんの意見を拒否した。
大山さんは、あたしを見て、ため息をつき、迷惑そうに。
「オレの後ろにいろよ。何にも話すなよ。オレが言った言葉しか聞くなよ。わかったなチビ」
と、言った。

チビ、チビ、って……。

「……ハイ」

大山さんは、開け放たれた門をくぐり真っ直ぐ歩いて行った。
玄関に着くと、いかにも昔カタギのヤクザ風の男が睨みをきかせて来た。
「どこだと思ってきたんじゃい!」
大山さんは、男を見ると。
「神埼呼べよ」
と、命令した。
先程の男は、大山さんより伸長がある分、大山さんを見下ろし。
「神埼さんに何の用だよ」
と、言った。
そして、あたし達はグルッと囲まれてしまった。
「神埼に話しがあるって言ってるだろ?」
大山さんは、至って冷静に話した。
そこへ。
「こんな所まで、わざわざどうしたんですか?」
玄関の奥から声が聞こえた。
あたし達を、囲んでいた輪が玄関側の方だけ崩れて、声の主を輪の中へ通した。
「何かご用ですか?南署の大山さん」
初老の男性、神埼が出てきた。
「最近大人しくしてるかと思ってたら、裏でコソコソ何かしてんじゃねぇのかな?と、思ってな」
「何の事ですかな」
神埼の胸には金バッチが輝いていた。
「この男かくまってない?登君」
と、言って、大山さんは、あの写真を神埼に見せた。
神埼は無表情に。
「知りませんな」
と、言ってのけた。
「顔くらいは知ってるんでしょ?」
「知りませんな」
そう言われて大山さんは、クルッと振り向くと、無言で帰ろうとした。


< 4 / 7 >

この作品をシェア

pagetop