加納欄の出会い シリーズ2
「すいませんねぇ。なんのおもてなしもしなくて」
茶髪のお兄さんが、笑いながら大山さんに言葉をぶつけた。
大山さんは、そのお兄さんにわざと唾をはきかけ、そのまま無視して歩いた。
「野郎~!」
唾をはきかけられたお兄さんは、大山さんに向かって殴りかかった。
瞬間にあたしの体が動いていた。
正面からみぞおちに蹴りを1発いれた。
お兄さんは、そのままうずくまり動けなくなる。
その様子を、その場にいた大山さんを含め皆が呆然と見、しばらく立ち尽くしていた。
が、我に返り、やられてしまった子分を見て、違う兄貴分が、あたしに向かって来た。
今度は、大山さんが、すかさずあたしの前に現れて兄貴分達と乱闘をはじめた。
あたしの方にも何人か流れて来た。
「チビッ!逃げろ!」
大山さんが、あたしに怒鳴った。
4、5人相手にしている大山さんは、すぐ近くにいるあたしの所にも来れない状態だった。
「逃げろって!」
大山さんが、もう1度声をあげた。
「逃がすか!やっちまえ!」
先ほど、みぞおちをくらったお兄さんがなんとか復活して、あたしに敵意を剥き出した。
あたしは、ジャンプをすると身体をクルッと回転させて、回し蹴りをし、お兄さんの顔面に蹴りをいれた。
と、思ったら、顔面まで足が届かなくて、お兄さんの喉に的中させてしまった。
またもやお兄さんは、息ができなくなり、転げ回った。
立て続けにくる、血の気の多いヤクザ相手に、あたしは容赦なく反撃に出た。
関節を外し、当て身を食らわし動けなくさせた。
自分の対戦相手がいなくなって、その様子を大山さんがポカンと見ていた。
あらかた片付いたのを確認して。
「大丈夫ですか?」
と、大山さんに聞いた。
大山さんが、フト我に返る。
「あ、あぁ、帰るか」
と言った。
「はい」
あたしと大山さんは、門に向かって歩いた。

車に乗ると、大山さんが、ハンドルに顔を伏せて、ハァ~っと、深いため息をついた。
あたしは、何事もなかったかのように、シートベルトをした。
「お前なぁ……」
「……」
「お前、柔道やってないって言ってたけど、やってんじゃねぇかよ」
「……あれは、柔道じゃないです。あれは……」
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