「私、先生の事が大好きです…」
 私は、昨日のことをかいつまんで説明する。
 先生との出会い、素敵な、時間。

 「そんなわけで、思わず、『入部したい』って言っちゃったんだよね」
 「…そうかぁ…ってあれ、まさか、亜紀ちゃん?」

 びっくりした顔。
 そりゃそうだ。たぶん、沙雪も今ので気が付いただろう。私の、気持ち。

 「好き…みたい。先生のこと…」
 
 口に出してみると、案外、しっくりきた。ああ、本当に私、好きになったんだ。先生のこと。沙雪に説明しながら、もしかして、が確信に変わる。

 「亜紀ちゃん…なんていうか、おめでとう、なのかな。でも、ちょっと、その」
 「ん…」
 
 嬉しいような複雑な顔で沙雪は言う。

 「それ、たぶん、すごく難しい…っていうか、大変、だよね」
 「だよねぇ…。でもね、沙雪。私、なんか、昨日、ほんとすごく楽しかったんだよ。久しぶりに生きてるって感じがしたっていうか…瞬間がキラキラ光ってたってゆーか」
 「無気力な毎日に、新しい風が吹いた、…みたいな?」

 言って微笑む。さすが、詩人。
 加えて沙雪は言う。

 「大変そうだけど、亜紀ちゃんの恋なら、私は全力で応援するよ」
 「ありがとう、沙雪」

 心地よい、夏の風が吹き抜けていった。
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